では、本題である、めぐにとってのこの最後の戦いの意味に入りましょう。幼い頃のめぐの望みは、「美木を守れるような強い男になる」ことでした。したがって、めぐにとってこの最後の戦いの意味は言うまでもなく、それを達成することにあります。ただし、実は前編のラストでめぐが男として生きると決意して以降、めぐはその信念をほぼ絶対的なものとしており、客観的にはもうこの望みはすでに達成されています。例えば、本編4の総括で触れたように、柳沢はすでに コイツは女じゃねェ! いや…そういう次元じゃねェ!!
と、めぐに男女という次元をはるかに超越した強さを感じているわけですし、小林らもはっきり男女を超えためぐの強さを認めています。しかし、何度も書いてきたことですが信念において重要なのは客観的評価ではありません。めぐはいまだに「男」にこだわっているわけで、まだその自分の理想とする「美木を守れるような強い男」になれたとは思っていません。めぐがそうなれたと実感することで初めて幼いめぐの望みは達成されるのです。
そんなめぐの最後の戦いは、上に書いた爆弾の爆発によってドアの下敷きで意識を失った源造を爆発の影響で崩壊しつつある建物から救い出すことです。もちろん、めぐは戦闘能力こそは高いものの、やはり現実的には女であるため純粋な力はさほどありませんから、ドアの下敷きとなった源造を救い出すのは容易ではありません。
力が欲しい… 力が…
しかし、これまでこの最後の戦いにおいて仲間の男たちが土壇場でこそ信じられないような力を出してきたことをめぐは思い出します。
負けるかよ。ざけんなよ。力が無いとかそんなの関係ない。
イザとなると、男は凄いんだよ!
この強烈な信念のもとで、自分にある全ての力を持って、めぐは源造を救い出そうと奮闘します。そして、意識を失いかけながらも源造を抱えながら崩壊しつつある建物から抜け出すまであと一歩のところまでたどりつきます。
もう 一歩。もう一歩。何も見えない…
だ め だ。
皆… あきらめなかったろ。俺だって…
もう 一歩。も う…
皆、俺に力を。あきらめない勇気を。俺に…も
一歩。
この「一歩」は幼いめぐの願い「美木を助けられるような強い男」への最後の「一歩」でもあったのです。
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