魔本の性質
 魔本の性質はこの作品を根底で支える設定です。様々な超常的な能力を持っていることから一見なんでもありな設定に思えますが、小悪魔とカッパをじっくり観察すると、魔本の性質もきっちり設定されていること、そしてそれに伴ってその能力にも多少の制約があることがわかります。ここでは、小悪魔とカッパの情報をもとに魔本の性質について整理してみましょう。
基本
1.すさまじい念を残して死んだ人間の昇華されない彷徨える魂を
  銀の手とその弟子達が秘術により本にしたものである。
2.魂の強い良き者のところへ行ってその人の望みを叶えようとする。

3.人間の頃の自分に似た人を選んでとりつく
4.本の能力は封じた者と封じられた者の力に依存する
   以上はカッパの情報より。(16巻p158〜161、17巻p39)
   作品中で見せる能力を考えると、
   小悪魔の本の力がカッパのものよりはるかに大きいのは間違いないでしょう。
   小悪魔の魔本がかなり分厚いのに対して
   カッパの魔本はページ1枚ということから、
   魔本の厚さが能力に比例しているのかもしれません。

5.能力を使うために以下の2通りの方法で人の生きるエネルギーを集める必要がある。
 ・生きるエネルギーを一気に大量に奪う〔対象の許可が必要〕
 ・幸運(生きるエネルギーの一種だが量は微少)を奪う〔対象の許可は不要〕

   小悪魔の情報より。
   前者を「寿命を奪う」、後者を「呪う」と小悪魔は呼んでいるわけです。(12巻p63〜64)

6.人間時代の無念の想いが晴れればその魂は昇華され、ただの本に戻る。
   小悪魔・カッパともに、めぐ・藤木の願いを叶える過程で
   死に際に自分が果たせなかった想いが晴れ、最終的に浄化します。

能力
1.人の生きるエネルギーを源にした力を使うことで魔法を使ったり姿を具現化する。
   小悪魔のセリフより。(12巻p63)

2.その魂は魔本からしばらく離れることが可能
   海に溺れる人を助けに行った際、
   藤木は海の中にまで魔本を持って行けないはずですが、
   その魂を具現化した姿であるカッパは藤木のそばにいました。(17巻p27〜)
   どの程度の範囲・時間等で可能なのかまではわかりません。

3.呼び出した人の望みを知っている
   カッパの「君らの望みはわかってるんだ」というセリフより。(16巻p164)

4.人が普段何を考えているかまでは分からない
   これについては作品中では明示されていませんが、
   小悪魔・カッパの言動、めぐたちとのやりとりから心を直接読む能力はないものと思われます。

5.完全ではないものの予知能力を持っている
   カッパの次のセリフより。
   「僕は今日ねこの辺で嫌な事が起きそうだと予知したの。すごいでしょ。
   でも、それ以上はわからんのよ。神じゃないんだから。」(17巻p26)
   カッパよりはるかに能力が高い小悪魔の予知能力はさらに強力と思われます。
   将来的に美木を守る際にめぐに大きな障害があることを早い段階で予感していて
   だからこそ、めぐや源造に呪いという試練を与えていたものと思われます。

以下の能力については小悪魔においてのみ確認

6.無意識下に忍び込んで、そこにある様々なものをその人に見せることができる。
  (その人が元々持っていないものは引き出せない)

   小悪魔のセリフより。(12巻p98〜101)
   実際に源造や藤木に無意識下にあるものを幻として見せています。

7.はるか遠くからでも、とりついているもの(とその関係者?)を観察することが可能
   大和撫子杯で美木の記憶が戻りそうなときに、
   源造の自宅にある魔本の中から美木のことを観察していました。(15巻p13)

8.とりついているものとはテレパシーができる。
   藤木のピンチを小悪魔がめぐに知らせていました。(17巻p31)

9.物理的に何かを作り出すことは困難だが複雑な手を使えば可能
   小悪魔のセリフより。(12巻p97)
   実際にめぐの記憶を操る際に、幼い美木の髪を伸ばしています。(20巻p184)

10.記憶を無意識下に封印するにはそれなりの力が必要
   鎧武者を葬る際に力を消費してしまった小悪魔は
   表に出かけた美木の記憶を封印できなくなりました。(14巻p173、p186)

小悪魔の過去
 外伝にある小悪魔の過去を簡単にまとめます。

 小悪魔は元々は泥棒だったのですが、他部族に襲撃され瀕死の重傷を負った身体で牢屋に閉じ込められることになってしまいます。もはやあと数時間で命がつきそうな身体で、彼は牢屋の中から一人の少女を見つけます。ひたすらこき使われ絶望の瞳をした少女を。その少女に彼は「ここから逃がしてくれたら、素敵な物を見せてあげるよ。」と声をかけます。彼にとって単なる冗談のつもりだったのですが、全てに絶望していた彼女にとってその言葉は希望だったのでしょう。少女はひっそりと彼に牢屋の鍵を渡します。その時、彼は生まれて初めて本気になります。自分が隠していた宝をその少女にただ見せようと、約束を果たそうと最後の力を振り絞って自由の効かない身体で這いながら進みます。しかし、傷ついた彼の身体はもう限界でした。

 待て。 もう少しだ。
 驚いた顔が見たいんだ。俺が嘘をつかなかったと…

右手を伸ばしたところで彼は最期を迎えます。そのすさまじい念は昇華されることはありませんでした。時が流れ、彼が息絶えた場所を訪れた銀の手により彼の念は魔本内に取り込まれ、小悪魔として自分の果たせなかった願いを、命をも惜しまぬ願いを叶える人を捜し求めることになります。そして、ついに彼は幼いめぐと出会うのです・・・。

カッパと小悪魔の比較
  カッパ 小悪魔
晴れない念 溺れた娘を助けられずに
死んでしまったこと
少女との約束を果たせずに死んだこと
具現化された姿が
象徴するもの
*溺れて死んだ苦しみ 泥棒だった人間時代

現れたきっかけ

小林の美木への純粋な想い

幼いめぐの美木を守りたい
という純粋な想い

最終的に昇華できた理由
(想いが晴れた理由)
娘を救おうとして
溺れかけたオッサンに
自分の過去の経験を重ね
藤木の協力によって
オッサンが娘を救い出したこと
めぐが美木を守るという願いに
命を惜しまなかったこと
*溺れかけた(カッパが過去の自分と重ねあわせている)オッサンが
 藤木から浮き輪を渡された瞬間にカッパは人間の姿に戻っていきます。(17巻p35)

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