キスするとね、魔法が解けるんだ。 上に書いたように、幼い頃のめぐの望みをはここまでで既に達成されました。つまり、めぐは美木を守れるような強い男になることができたわけです。しかし、同時にその過程でめぐは、共に行動してきた源造に「男の中の男」を認め、無意識下に封印された女としてのめぐがその源造に惹かれていました。そして、めぐ自身も自分のその想いに気付き、自分が源造を好きだということを認めているわけです。しかし、前編ラストと同様にめぐはこの時点ではまだ自分が魔法によって女にされたと思い込まされており、魔法が解ければ自分が男に戻ってしまうと思い込んでいます。したがって、キスすることで魔法が解けることは本能的にはわかっているのですが、それはすなわち自分が男に戻ってしまうことだと思っているわけです。つまり、めぐは自分の想いと源造の想いのいずれも男女の形としては報われることはないと分かっているわけです。
一方で、源造自身はそんなことは露知らず、幼い頃と同じくめぐに敗北感を感じていました。
「めぐの勝ち、男勝負は。ブッチギリでめぐの勝ちだ。」
めぐは源造に「男の中の男」を認めおり、完全に源造のことが好きなのですが、肝心の源造はそのことに全く気付いていないわけです。そんな源造を見てめぐは自分の想いを伝えることを決意します。男に戻って自分の想いが報われないかもしれないとわかっていても、女としてのめぐがその想いを伝えたかったわけです。前編ラストでの
「男に戻ったって大丈夫だ、めぐ。」
「俺はオマエを守る。俺は絶対オマエが好きだ。」
源造の言葉を、今度こそ信じようとしたわけです。そして、当時は賭けとして受動的に源造のキスを待ったのですが、源造を「男の中の男」として信じている現在のめぐは自分からキスを選びます。このキスには、自分の源造への想いが女として報われなくてもかまわないという決意と女として源造の気持ちに応えられないことになることをわかっていることに対する申し訳なさの2つを込められているのです。
「俺は、オマエが好きだよ」
もういい…
悪いナ ゲンゾ――
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