この大和撫子杯では、後に岳山の手下となる柳沢が新たな敵として登場します。柳沢も岳山と同じく、徹底的に真の信念を持たないものとして描かれています。柳沢の思考回路を象徴するセリフをいくつか挙げてみましょう。 「よく見ろよ、あの男のツラを。アレが主役の顔か?」
「君は主役を張れる人間だ。」
「いい主役で行けねえなら、悪役で行くって手もあるんだぜ。」
てな事を言うのは脇役のする事だ。主役はこう
これらから明らかなように、彼は常に他者に映る自己像(柳沢的に言うと役割)を意識して行動しています。この客観的自己像の追求が彼の行動の指針になっているという意味で、これが柳沢の信念とも言えます。これはめぐたちとは対照的な思考回路です。めぐたちの信念は自分の中にある絶対を出発点としています。一方、柳沢のこの信念は自分の外側にあるもの、しかも他者の心理という移ろいやすいものを出発点としているため、状況によって絶えず変化する非常に不安定なものなのです。これはめぐたちの、つまりこの作品の追求する信念とは正反対なものなのです。
|