本編1 〜再会〜 (第1章〜第25章より)
 作品としてはここから連載が始まりますので、基本的には作品の設定(実際は読者を騙す仕掛け)、登場人物の性格などこの作品の世界観を読者に見せる内容になっています。この辺りではまだ作者自身も登場人物の性格を確立できていなかったためなのか、後で読んでみると「あれ、こいつこんなキャラだったっけ」と思うことがしばしばあります。特に小林なんかほとんど別人ですもんね。
 さて、この本編1で核となるのは、めぐが源造、そして小悪魔と再会することです。まず、めぐがプロローグ以降完全にグレてしまっていた源造といよいよ再会します。ただし、両者ともそのことにまだ気付いていません。言うまでもなくめぐは小悪魔によって当時の記憶は封印されているからです。ただし、源造の場合は、記憶を封印されているめぐと違ってあの事件そのものを忘れているわけではありません。そのことは次の源造のセリフからうかがえます。

 「フフフ、めぐちゃん あまり俺を侮ってほしくないな。
 俺は同年代の男に負けた事はないよ。いやホント。」

わざわざ「男に負けた事はない」と男を強調しているのは、女であるめぐに負けた記憶が残っている証でしょう。めぐは髪が伸びるなど当時と外観が全く変わっているため、源造は自分がかつて傷つけてしまったと勘違いしている相手だとは気付いていないものと思われます。源造がそのことに気付くのは本編2以降ですし、めぐに至っては記憶が戻る最終話直前までそのことを知らないままです。しかし、源造は、この記憶こそ思い出しませんが、めぐと交流することでかつての自分を徐々に取り戻していきます。

 プロローグに書いたようにめぐに魔法をかけたあの魔本を源造が所有しているのはまさに奇跡とも思えますが、おそらくこれは小悪魔が将来的にめぐが源造と再会することと、めぐが美木を守る際に源造の力が必要になることを感じていたから、わざと源造に拾われたのでしょう。そして、いよいよめぐは小悪魔と再会します。

 ここでめぐは、小悪魔に災いが降りかかる呪いをかけられる(後に分かることですが、正確に言うと幸運を奪われる)と同時に、自分の状況に悩み始めます。一つ目の悩みは、小悪魔とのやりとりの際に、源造の(めぐから見て)男らしい行動を目の当たりにし、その一方でめぐ自身は自分が思い描く男としての反応ができなかったことです。

 「昨日、見たろ。俺は偽者なんだよ。」

もう一つの悩みは、自分が小悪魔の支配下にあるということを知ったことです。

 「今はさ、女として生きてても、突然男にされちゃうかもしれないんだ…奴のイジワルで。」
 「こんなんじゃ、男でも女でもないだろ。」

これまで何の疑いもなく自分を男だと思い込んできためぐは、これ以降自分がどうあるべきなのかを考えていくようになります。小悪魔はおそらくそれを計算に入れていたのでしょう。

 また、小悪魔がめぐにかけた呪いに関してですがこれにも小悪魔の意図があると思われます。男に戻すよう頼んだめぐに対して、小悪魔は

 「私を川に投げた事を忘れたのかい。」
 「そーだ、代わりに災いが降りかかるよう呪いをかけてやろう。」

と言っていることから単なる嫌がらせのように作品上この段階では見せられていますが(要するに読者に小悪魔が悪い奴だという印象を与えるように見せられている)、川に投げられたのは自分がめぐに与えた偽りの記憶が原因ということを小悪魔は知っているはずですし、何より小悪魔はめぐの願いを叶えようとしているわけですから、実際はそうではないでしょう。今後、美木を守る際に訪れるであろう障害の大きさを感じていた小悪魔は、再会しためぐは確かに強くはなっているものの、その障害を乗り切れるまでに成長していないと感じており(小悪魔自身はあの事件以降めぐには会っていませんが、魔本の中からその様子は観察していたでしょうから、めぐの強さはだいたい把握しているはず)、めぐにもっと強くなってもらおうということで敢えて試練を与えたのではないのでしょうか。

 また、ここでは幼い頃からのめぐの思い込みに関しての小林のセリフがあります。

 「君はさ、男とか女とかにこだわり過ぎじゃないかな。」

小悪魔は、美木を守りたいというめぐの願いを叶えるために、幼いめぐの「女を守るのは男」という思い込みを利用しようとした、つまりこの思い込みが生み出す力で美木を守らせようとしたわけですので、めぐは現在もその思い込みに縛られているわけなのです。

本編1.5(第26章〜第65章より)
 ここから先もしばらくは基本的には本編1の流れを受け継いでいて、魔法使いの格好をしたオッサンや桂子との再会、そして本編1でかけられた呪いという小悪魔からの試練を絡めてめぐがより強くなっていくという内容の話が続くのですが、作品の本筋とはあまり関係がないこともあってか退屈に感じてしまいます。ここを超えれば物語全体として動き始めますから、ここがこの作品を最後まで楽しめるかどうかの最初の壁でしょう。(ちなみにかくいう私も確かサンデー連載中はこの辺りで挫折しかけた記憶が^^;)

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