About 〜このサイトについて〜
 このサイトは西森博之氏の『天使な小生意気』(小学館)を考察することを主たる目的としていますが、このサイトを設立しようと思ったいきさつをここでは紹介します。

 『天使な小生意気』は週刊少年サンデーで連載されている頃からずっと読んでいたのですが、連載中の印象としては「そこそこ面白い」という程度で特に名作だとは思っていませんでした。主人公が元男という設定や男らしさとは何かを追求する内容に捕らわれるあまり、この作品の本質が全く見えていなかったからです。今となっては神降臨とも思えるほどの凄まじい内容の終盤を見ても、連載中のそんな私の印象は変わりませんでした。(それどころか「よくここまで直球勝負するなぁ・・・、恥ずかしくないのかなぁ・・・」とすら思っていたほどでした^^;)

 しかし、最後の最後でこの作品の設定が明かされたときに初めてこの作品が真に言わんとすることが何となく分かり、一気に印象が変わりました。それ以降「これは最初からもう一度読まんとあかん作品や」とずっと思ってきたのですが、面倒がりの性格が災いしてなかなかそれを実践できず、ようやく今年の1月になって一気に単行本を全巻揃えることができました。(どういうわけか以前増刊か何かで読んだことのあった『外伝』が単行本には収録されていませんでしたので、わざわざそれが現在掲載されている『サンデーR』まで通販で手に入れました。)

 そして、この作品のラストで自分が直感したこの作品のテーマを意識しつつ、改めて最初から読んでみたのですが、まずそういった作品のテーマ以前にこの作品がかなり計算されて作られていることに気付きました。西森氏には『今日から俺は!!』のイメージが強いため、こんな20巻単位の長期的な構成や設定を計算しているなどとは全く思っておらず、連載しながらあれこれ考えているのだろうと思っていましたから、これにはかなり驚きました。

 というわけで、実は作品設定・構成もかなり高い水準であることがまず分かったのですが、内容はそれに勝るとも劣らずすさまじいものでした。連載中のラストで直感したイメージよりもさらに高い次元のテーマ、それを無駄なセリフを入れずに作品全体として表現するストーリー・・・。ここまで高水準で両者が融合された作品はこれまでほとんど出くわしたことがありませんでした。

 確かにこの作品よりも難しい概念を扱っている作品はあるのですが、そういう作品の多くはそのテーマが作品レベルに昇華されておらず、登場人物が口でそのテーマについて延々と語ることになりがちです。それで主張が伝わるのならテーマを語る方法としては問題はありませんから、それが絶対的に悪いというわけではないのですが、そういう表現方法では純粋に作品としての完成度が高いとは言い難いでしょう。いくら素晴らしい概念を語っていても中身が論理的に書かれていない論文の主張は評価しようがないのと同様に、主張が作品レベルで表現されていないような作品の場合、いくらその主張が単体として素晴らしいものであったとしても、作品としての評価は別となるわけです。何よりその概念を語りたいだけならエッセイやらなんやらで作者が自分の口で語ればいいわけですしね。

 そんなこんなで「こんな超名作と呼べる漫画は初めてだ・・・」と感動に浸りつつ、「ネット上でも絶賛の嵐だろう」とこの作品の感想をいろいろ見たのですが、そうでもなかった・・・。単なるギャグ漫画として片付けられているか、『今日から俺は!!』と比べると・・・みたいな意見が多く、まともな評価もジェンダーの視点によるものが中心でした(ジェンダーの視点からの酷評も)。この作品の内容がきっちり消化された上でそのような評価になるのなら仕方ありませんが、その原因はほとんどの人がサンデー連載中の頃の私と同じの見方でこの作品を読んでいることにあり、この作品の本質だと私が思っている部分を捉えた上で評価を下している人はほぼ皆無でした。「・・・ならば自分が評価しよう、そしてそれによってこの作品にはこういう見方もあるんだと少しでも多くの人に知ってもらおう」と思い立ったのがこのサイト設立のきっかけです。

 ちなみに『view』という単語には、「見方」という意味の他にも「風景」「見解」「意図」といった意味があります。このサイトのタイトルにはそれら全ての意味が込められてます。

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